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2026年7月21日

処遇改善加算、職員への支給額はいくら必要?
法定福利費の計算方法

処遇改善加算、職員への支給額はいくら必要?法定福利費の計算方法

今回は処遇改善加算における賃金配分や法定福利費の考え方についてご説明します。


まず前提として、介護職員等処遇改善加算による賃金改善では、加算額の全額をそのまま職員の給与として支給しなければならないわけではありません。


賃上げに伴って増加する社会保険料や労働保険料などの「法定福利費等の事業主負担増加分」も、賃金改善額に含めることができます。


ただし、法定福利費を計算する際に、加算額から事業主負担率をそのまま差し引く方法は正しくありません。弊所ではこれを「控除方式」と呼んでいます。


厚生労働省のQ&Aが示している考え方に従うと、加算額を「1+事業主負担率」で割り戻して、実際に職員へ支給する賃金改善額を算出します。弊所ではこれを「割り戻し方式」と呼んでいます。


法定福利費の事業主負担分も含める事ができる


厚生労働省の「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A」では、賃金改善額に次の金額を含めることができるとされています。


処遇改善加算による賃金改善分に応じて増加した健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料等の事業主負担分


また、法定福利費等については、合理的な方法に基づく概算によることも認められています。


つまり、処遇改善加算によって賃金を引き上げた結果、会社負担が増加する社会保険料・労働保険料についても、賃金改善額の一部として取り扱うことができます。


ただし、従来から会社が負担している法定福利費を含められるわけではありません。対象となるのは、あくまで処遇改善加算による賃金改善に伴って増加する事業主負担分です。


令和8年度の事業主負担率の計算例


次の条件を前提として計算します。


・協会けんぽ三重支部に加入

・対象職員全員が40歳以上64歳以下

・全員が厚生年金・雇用保険に加入

・雇用保険は一般の事業

・労災保険率は0.3%


この場合の令和8年度の事業主負担率は、概算で次のとおりです。


法定福利費の内訳    事業主負担率

健康保険         4.885%

介護保険       0.810%

厚生年金         9.150%

子ども・子育て拠出金 0.360%

子ども・子育て支援金 0.115%

雇用保険       0.850%

労災保険       0.300%

合計           16.470%


加算額から16.47%を引く「控除方式」は正しくない


処遇改善加算が仮に10万円だった場合、次のように計算してしまうことがあります。


<誤った計算例>


100,000円×16.47%=16,470円


100,000円-16,470円=83,530円


この計算では、法定福利費の事業主負担率16.47%を「処遇改善加算10万円」に掛けています。


しかし、厚生労働省Q&Aでは、賃金改善額に含められる法定福利費を「賃金改善分に応じて増加した事業主負担分」としています。


したがって、16.47%を掛ける対象は処遇改善加算の総額ではなく、実際に職員へ支給する賃金改善額です。


83,530円に16.47%を掛けると、事業主負担増加分は約13,758円です。


83,530円+13,758円=97,288円


※この方法では、賃金改善額と法定福利費等の合計が10万円に届かず、約2,712円の不足が生じます。


厚生労働省の考え方に沿った「割戻し方式」


処遇改善加算10万円の中から、賃金改善額と法定福利費等を算出する場合は、割戻し方式で計算します。


職員へ支給する賃金改善額を X 円とすると、計算式は次のとおりです。


X+(X×16.47%)=100,000円


したがって、


100,000円÷1.1647=85,859円


計算結果は次のようになります。


内訳 金額

職員に配分する額面の賃金改善額 85,859円

法定福利費等の事業主負担増加分 14,141円

合計 100,000円


したがって、この事例では、処遇改善加算10万円に対して職員へ支給する額面の賃金改善額は、概算で85,859円となります。

なお、上記85,859円は、職員に支給する月給・賞与等を合わせた額面の賃金改善総額です。全額を月給で支給する必要はなく、処遇改善加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払う手当で改善したうえで、残額を賞与や一時金等として支給することができます。ただし、支給時期は厚生労働省Q&Aに示された取扱いに従う必要があります。


賃金の配分については、対象職員全員を同額にする必要はなく、職責、経験、資格、勤務時間などを考慮して、事業所内で配分することができます。


計算する際の注意点


法定福利費の事業主負担率は、職員や事業所の状況によって異なります。


例えば、次のような場合には16.47%になりません。


・40歳未満の職員がいる

・65歳以上の職員がいる

・社会保険に加入していない職員がいる

・雇用保険に加入していない職員がいる

・協会けんぽ以外の健康保険に加入している

・協会けんぽの三重県支部以外である

・労災保険率や雇用保険率が異なる事業を行っている


職員によって加入状況が異なる場合は、職員ごとに計算する方法や、対象者の構成割合を反映した平均料率を使用する方法が考えられます。


また、健康保険料や厚生年金保険料は、実際には標準報酬月額や標準賞与額に基づいて決定されます。そのため、今回の計算は厚生労働省Q&Aで認められている「合理的な方法に基づく概算」の一例です。


実績報告に備え、使用した料率、対象職員、計算式などの根拠資料を保存しておくことが重要です。


まとめ


処遇改善加算により賃金改善を行う場合、賃上げに伴って増加する法定福利費等の事業主負担分も、賃金改善額に含めることができます。


ただし、加算額から事業主負担率をそのまま差し引く「控除方式」ではありません。


基本的な計算式は次のとおりです。


職員への賃金改善額=処遇改善加算額÷(1+事業主負担率)


処遇改善加算額が10万円、事業主負担率が16.47%の場合は、


職員への額面支給額:85,859円

法定福利費等の事業主負担増加分:14,141円


となります。


職員の年齢や保険加入状況によって適用される料率は異なるため、実際の処理では事業所ごとの確認が必要です。


参考:厚生労働省「令和8年度介護職員等処遇改善加算に関するQ&A」問1-7

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